DDR5メモリはいつ頃普及するか?

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 今回は、次世代のメモリ規格であるDDR5メモリがいつごろ普及するかについて個人的な考察をしたいと思います。

そもそもDDR5 メモリとは?

 DDRとはDouble-Data-Rate SDRAMの略称で、メモリ(RAM)の規格を指します。当ブログは踏みゲー学会なのでDance Dance RevolutionのDDRを扱っていますが、今回の記事はこのDDRは全く関係ないので注意しましょう。(余談ですが、あと有名なDDRといえば東ドイツもDDRです)

 このDDR規格も世代交代が起きており、現在の主流はDDR4で、2012年に規格の仕様が決まり2014年にパソコン向けが登場し現在でも多くの機器に搭載されています。新型のPCを買おうとした際についてくるメモリはほぼこのDDR4メモリです。また、一部の古いPCではこの前世代のDDR3メモリもそれなりに見ることができます。一方でDDR2以前のメモリはDDR2世代の対応CPUの性能がもう時代遅れなのもあり現在では中古PCでも見ることは少なくなっています。

 そして2020年に規格が定まりDDR4の後継となるのがDDR5メモリです。DDR5はDDR4規格に比べてCoreとI/O電圧が0.1V下がり消費電力の低減が行われています。データの転送レートもDDR4の2倍と大幅な性能向上がおこなわれています。DRAMあたりの容量も数倍になり、DDR5ではECCメモリが標準搭載されるなどDDR5ではDDR4に比べると大幅な性能向上が図られます。

個人的な見解

 新技術に意欲的な自作erが常識的な価格でDDR5メモリを手に取る時期は最低でも2023年の中盤ごろだと予想しています。また、新技術に消極的な既製品のような廉価なPCに搭載されるような時期は2025年以降になると思います。そう考えた理由について説明をします。

理由 1 未だDDR5対応のパーツが販売されていない

 2021年10月14日現在、少なくとも民生用ではDDR5対応のCPUやマザーボードは販売されていません。メモリに関しては下位互換性はないため、DDR4のメモリは使えません。 そのため、仮にDDR5のメモリが今販売されたとしても現在の環境では使うことができない仕様となっております。

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 そしてまもなく登場するintelのCore12世代の Alder lakeでは、DDR5メモリに対応するといううわさがありましたが、結局はDDR5には対応しないことが明らかになりました。このことから最低でも次の新商品は半年先になるので、この時点でDDR5環境は2021年現在では構築することができないことが実質決まったと思います。

DDR5メモリが使える環境がない以上、生産しても負債になるので最低限しか生産することはないでしょう。その結果、生産開始直後のDDR5メモリは極めて高額になると予想します。

理由 2 DDR5は生産が難しくなる

 メモリもCPUやGPUと同じように半導体のプロセスの微細化を行うことで、性能の向上を図っています。そしてDDR5でもやはり同じくこのプロセスの微細化を行うことによって性能が向上していくという方針です。しかし、プロセスの微細化が極限まで進んだことにより今日ではこれまで使っていた、AfFリソグラフィーという比較的実績があり安価に行うことができる手法から、最近開発されたEUVリソグラフィーという極めて機器が高額な手法で製造をしないとこれ以上のプロセスの微細化が厳しいところまで来ています。

(ただしDDR4でも一部EUVを使った製造を行っている場合がある、EUVを使わないとDDR5メモリではないというわけではないが、直近ではDDR4の完全上位互換でリリースすることを考えるとEUVを使った生産が大半であると想像できる)

https://news.mynavi.jp/article/20211012-2120726/

マイナビニュース

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 DRAMでも、業界最大手のサムスンがEUVを使ったDDR5メモリの製造に乗り出すことからこの動きは業界でも加速していくことでしょう。しかし、EUVリソグラフィーを行う機械はそもそも一社しか作れず、需要と供給のバランスが取れているDDR4メモリで比較的安定しているDRAM業界に比べて、CPUやGPUなどのロジック業界では需要が増大し供給が追い付いていない状態であり、露光装置の優先順位が後回しにされる可能性が十分考えられます。

 そうでなくても、新しい装置を使っての生産は準備や手間がかかるため初めのうちは大幅にコスト増になってしまうことが想定できます。これによりDDR5のリリース直後の値段は非常識的な価格になると思います。

理由3 DRAM業界は寡占状態

 三つ目の理由としては、DRAM業界の寡占状態によりDDR5の値段がなかなか下がらないということです。そもそもDRAM業界はサムスン、マイクロン、SKの三社による寡占状態です。いちおうそのほかの会社もDRAMは作ることができますが、EUV露光装置をそろえてDDR5を真っ先に生産できるような会社は確実にこの三社だけです。基本的には日本のどのパソコンにもこの三社のどこかのDRAMで構成されたメモリが搭載されていると思います。

 この三社でDRAM業界で三つ巴の争いを繰り広げられていると思われがちですが、どちらかというとカルテルを組んでお互いに利益を守っているという構図に近いと思います。もともと2010年に欧州でDRAMメーカーがカルテルを組んでいたことが認められ、制裁金をかけられたこともありますし、それによりDRAM業界の再編が進み大手三社にまとめられたことでより一層カルテルを組みやすい構図にあります。

 また、これはDRAMに使用するプロセスルールの名称の変更にも見られます。CPUやGPUのプロセスルールは○○nmプロセスと具体的な数字を使って一目で優れているかどうかわかりやすいものとなっており、競争を生み出しやすい表記方法となっております。しかし、DRAMでは2xnmプロセス、1ynmプロセス、1znmプロセス、1αnmプロセスと初見だと何が何だかわからないものとなっております。これは過当競争を防ぐための紳士協定といわれており、このことからもDRAM3社は競争よりも互いの利益確保を優先しがちであるという構図がわかります。

 このような寡占状態を続けたい理由としては、DRAM価格は非常に値動きが大きいものであり価格が高価な時は大きな利潤を生みだせる半面、価格も大幅に下落する場合がありこの場合は投資額も莫大であるため非常に厳しい選択が迫られます。実際倒産した日本のエルピーダメモリも、終末期にはこのDRAMの下落問題には悩まされたので、各社ライバルよりもこのDRAM価格の下落のほうが脅威であるといえるでしょう。

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 DDR5は多くの新機軸を搭載したメモリであり、コモディティー化する前にできる限り高値で売りたいはずですので、各社ともにある程度高価な時期が続くと思います。

理由4 そもそもDDR5メモリに需要が生まれない

 これが最大の理由だと思います。ぶっちゃけDDR5メモリに変える意味が薄いため乗り換え需要は生まれないと思います。 

 DDR5のメリット1つであるコア電圧の低下ですが、メモリの一枚0.1Vが下がった程度でぶっちゃけPC全体の電力消費量は全く変わりません。なんなら次出るGPUはグラフィックカード1枚で500W越えなどと予想されているのでせっかくメモリが電力消費を削減しても全部それは無駄になります。さすがに何千枚もDRAMを運用ような環境ならば、多少は違うでしょうが少なくとも10枚20枚程度では誤差の範囲内です。

 続いてメモリ速度が倍になることですが、メモリ速度が倍になっても絶対にPCの性能は倍にはなりません。もちろんメモリ速度が速くなるとPCの性能は向上しますし、これによりそれなりに速くなる動作もあります。しかし、二倍の性能増からは驚くほど微々たるスペックの増加しか期待できずHDDからSSDに載せ替えたときの感動や外付けGPUなしからのGPU搭載といったような大幅なスペック向上はおそらくDDR5メモリには期待できないでしょう。

 メモリ速度向上の一番の恩恵は内蔵グラフィックでしょう。内蔵グラフィックは独自のグラフィックメモリを持っておらずどうしても遅延が発生してしまいます。メモリ速度が高速であれば、内蔵グラフィックとメモリ間の情報のやり取りにかかわる遅延問題がある程度は改善させるのでこれにより性能向上の実感ができます。

しかし、これもある程度限界がありDDR5でもバス幅の問題が解決できません。これはメモリ速度が高速道路を走る車の速さであるのに対してバス幅は車線の数という概念です。つまり、どんなに高速道路を車が速く走れても車の走る台数が車線以上には増やせないという問題を抱えています。これを解決するにはそもそもDDRシリーズとは構造が大きく異なるHBMというメモリを使用しなければなりません。

 そしてECCメモリ搭載が必須という点ですが、ECCメモリはメモリ上で発生したエラーを訂正することができるメモリです。このメモリがあることにより、メモリエラーを限りなく防ぐことができるためサーバーや科学計算用途の高価なコンピューターには現在でも採用されている機構です。ECCは単純にメモリに新たにチップを増設するため、通常のメモリよりも高価です。DDR4ではオプションにされていますが、DDR5ではこれが必須となっております。これはどういうことかというとDDR5ではECCを載せないと使い物にならないということです。DDR5ではプロセスの微細化や容量増大により、不良ビットの数が無視できないほどに増えているためどうしてもこのECC機構を搭載する必要が生まれました。ECCが単純に必須となった以上DDR4よりも安価にするというのはなかなか無理難題だとと思います。

 そしてなによりDDR5が消費者に行き届くのに時間がかかりそうな理由としては、DDR5メモリを採用しようとするとPCの中身を取り換える必要があるからです。DDR5を利用するのには対応マザー、対応CPUが必要であり実質総取り換えです。DDR5世代のPCでないと、業務に使い物にならないというのなら乗り換えは速いと思いますが、ネットサーフィンやoffice程度ならばDDR3世代のPCでも問題ないですし、ゲーム用途、高度な3DCG用途ですら今のところDDR5が無いとダメということはありません。DDR5が今すぐにでも欲しいという人は、メモリ速度そのものに快楽を感じるオーバークロッカーだけです。こんなものどう考えてもすぐに普及するとは思えません。

 ぶっちゃけ2023年でも一般層に普及するのはだいぶ早い予想だと思います。

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