今回はCPUクーラーの種類について紹介したいと思います。リテールからランクアップしたいという方や、CPUクーラーの買い方についてわからない方は参考にしてください。
空冷タイプ
その名の通り空気で冷やすタイプのクーラーです。上記の図の通り、ヒートシンクをファンを使って空気を送り出す方式です。最大の特徴は稼働部位がヒートシンク付属のファンだけですので騒音や故障のリスクが極めて低い点と後述する2つのタイプどちらでもメンテナンスフリーであり、コストパフォーマンスに優れているという点です。
CPU程度の発熱ならばよほどオーバークロックをしない限り、空冷CPUクーラーでどうにかなります。
CPUクーラーの新調、買い替え、交換等には真っ先挙がる候補です。また空冷タイプのクーラーにも大きく分けて2つのタイプがあります。
空冷 トップフロー型
トップフロー型の空冷CPUクーラーは、上からヒートシンクに向かって空気を当てる方式です。
メリット
最大の特徴といえば、CPU付属のリテールクーラーでついてくるクーラーがこのタイプのクーラーです。このようなタイプの場合ヒートシンクがアルミニウムの塊でできており、本当に稼働部位がヒートシンクを冷やすファンしかついていないので理論上は半永久的に使えます。
また、上から風を当てられるという特徴から、CPU以外にもマザーボードのVRM等にも風を当てられるため、PC全体の冷却が部分的に可能であるという特徴も存在します。
一方で社外品の高性能な商品ではヒートパイプがついたものも存在しており、こちらはヒートパイプの寿命がありますが、ただのアルミニウムの塊を冷やすタイプよりも高い冷却能力があります。
デメリット
最大のデメリットは冷却能力に限界があることです。トップフロー型では、冷却能力を高める場合上にヒートシンクを積み重ねる必要がありケースとの兼ね合いである程度の大きさで限界が生じます。ファンの取り付けも実質1つしか取り付けられないので、ヒートシンクに当てられる風量にも限界があり、このような理由からトップフロー型はある程度の冷却性能以上は期待できないです。
また、リテールクーラーをそのまま使うならば実質0円なのでコスパが良いといえますが、社外品のクーラーはサイドフロー型に比べると性能当たりのコスパが悪いのであまり社外品のトップフロー市場というのは大きくないといえるでしょう。
サイズ オリジナル設計 トップフロータイプCPUクーラー 超天 CHOTEN 虎徹のトップフロー版コンセプト
空冷 サイドフロー型
サイドフロー型のCPUクーラーは、トップフロー型とは違いヒートシンクの側面から風をあてる方式のクーラーです。リテールクーラーでこのタイプのクーラーは存在せず基本的には社外品のクーラーを別途で購入することになります。
メリット
最大のメリットはすべてのタイプのCPUクーラーで最高のコストパフォーマンスを得ることができます。中途半端な水冷タイプのCPUクーラーと比べても引けをとらない性能でありながら、それら水冷タイプのクーラーよりも圧倒的安価です。また、トップフロー型とそこまだ値段が変わらない一方で、性能は格段にこちらの方が上です。
さらにメンテナンスもフリーなので、初心者でもおすすめできます。基本的に社外品のクーラーを買いたいならばよほど特殊な事情がない限りこのタイプのクーラーを買うとよいでしょう。
デメリット
デメリットというデメリットが少ないタイプですが、まず挙げられるデメリットとしてはやはり冷却能力に限界があるという点です。冷却能力の限界といってもTDPが320Wに対応しているような強力なサイドフロー型のCPUクーラーも存在するので、常時5Ghzにオーバークロックをするなどの極端なオーバークロックを行わなければこのタイプのクーラーで問題はありません。
また、サイドフロー型のCPUクーラーはヒートパイプというパーツでヒートシンクに熱を伝えて冷却ができるため極力な冷却能力を確保しているのですが、ヒートパイプの中には水分がおり、その水分が気化することにより効率の良い冷却能力を生み出しているのですが、経年劣化による水分蒸発により、このヒートパイプにも寿命がありCPUクーラー本体も永久的に使えるというという代物ではありません。
あとは近年登場したハイエンド品のサイドフローのCPUクーラーはどうしても背丈が大きくなりがちなので、2010年代以前のケースを使っている方はそこに関しては注意が必要です。
おススメの商品
サイズ オリジナルCPUクーラー 虎徹 Mark II
おそらく日本で最も有名な社外品クーラーです。迷ったらこれという声も多いです。3000円台という安価なモデルでありながら、定格範囲内のブーストならばRYZEN9 5900Xでもi9-10900Kでも安定して稼働させることができるという驚異の性能を持っています。また、見た目は厳ついですが静穏なのでリテールクーラーがうるさいという方にもおすすめです。
12cmファン搭載なのでどんなミドルタワーケースにならたいてい入ると思います。
忍者五
海外だと中クラスのCPUクーラー市場で人気の商品です。先ほどの虎徹からのステップアップにもピッタリの商品です。この商品も虎徹と同じく12cmファンを採用しているので、2000年代くらいの昔のケースにも問題なく収納することができるでしょう。
Deepcool AS500 PLUS CPUクーラー CPUファン Intel/amd両対応 静音
現在価格帯で言えば中クラスの空冷の中でもっとも強力だといわれているクーラーです。Deepcoolのハイエンドクーラーであるアサシン3を半分に切ったような形ですっきりしているものです。14cmファンを採用しているので低回転でも風量を得られ、静穏性と強力な冷却能力を誇ります。ただし、14cmファン採用であるためヒートシンクの背丈も12cmのものに比べると高く、2000年代製のミドルタワーケースだと背丈が干渉する恐れがあるので注意をしてください。
Deepcool ディープクール Assassin III 空冷 cpuクーラー CPUファン Intel/amd対応 静音
Deepcool ディープクール Assassin III 空冷 cpuクーラー CPUファン Intel/amd対応 静音
現在空冷最強と言われているクーラーです。14cmのデュアルファン+ヒートパイプ6本という驚異的な構成で圧倒的冷却力を誇ります。その冷却力は240cmの簡易水冷と比較しても勝るとも劣らない性能であり、現在のハイエンドCPUでも軽いOCくらいならどうにかいけるレベルでもあります。それなのにも関わらず1万円程度の価格で買えることからこれまでのCPUハイエンドクーラーとも比べても圧倒的なコスパです。
ただし巨大なのである程度大きいケースでないと干渉する可能性があります。
Noctua NH-U12A, NF-A12x25 PWM 搭載 高性能 静音 プレミアム CPUクーラー (120mm, ブラウン)
12cmファン最強の冷却力を持つCPUクーラーです。14cmでは入りきらないケース、マザーボードをいじる際に小さいCPUクーラーが欲しい際に考えられる商品です。ヒートパイプが7本という極端な構成になっており、12cmファンでも14cmファン搭載のCPUクーラーを超えることを目標にした意欲的な構成となっております。さらにノクチュアのファンなので、静穏性も抜群です。
デメリットとしては12cm空冷ファンのデュアルとして考えるとあまりにも値段が高く、下手したらより冷却力の強いアサシン3よりも値段が高い場合があり空冷ファンの中ではかなりコスパは悪いです。またノクチュア特有のファンの色は人を選びます。少なくともドレスアップ用に考えている人は注意が必要です。
水冷タイプ
水冷タイプのCPUクーラーはCPUに接した水枕から熱を取り込んだ水がラジエーターで冷やされて、再び冷えた水がCPUを冷やすことで効率よく冷やすことができる方式です。ですが、結局CPUで取り込んだ熱はラジエーターでファンで送られた空気によって冷えるので、本質的には空冷と変わりません。
CPUを直接水を使って冷やすわけではないので、間違っても水で冷やすようなことは絶対にしないでください。(一方で特殊な液体を使って本当にCPUを液体を使って冷却する方式もある)
そして日本でよく言われてるものとして簡易水冷と本格水冷という2つのタイプに主に分けられます。
水冷クーラー全般のメリット
最大のメリットとしては、ラジエーターの容積が多ければ大きくなるほど高い冷却能力が期待できます。360mmのラジエーターにもなると相当の冷却能力があるのでここら辺になると空冷クーラーも太刀打ちできない冷却力になる場合があります。
また、CPUの熱をラジエーターを通じてケース外に出すことができるので空気の入れ替えがしにくい、窒息ケースではこの特徴は冷却に大きな効果を発揮します。
さらに水冷タイプのクーラーはコンポーネントが多いので全体的にLEDで発行するものが多いです。そのため、ドレスアップをしたい方にはぴったりといえるでしょう。
水冷クーラー全般のデメリット
最大のデメリットとしては、空冷クーラーに比べると圧倒的にコスパが悪いです。最低金額が1万円程度からであり、安価な空冷クーラーもメインストリーム帯のCPUを定格で使えるくらいには冷却性能があるので明らかにコスパは悪いです。
そして基本的にメインストリームのCPUで確実に水冷タイプが必要なCPUは現状存在せず、できるなら水冷が好ましいCPUといえばryzen threadripperやintelのエクストリーム系、xeon Wなど極めて特殊なタイプのCPUくらいです。
さらに、水を回すポンプ、ラジエーターを冷やすために用意する大量のファンにより空冷に比べると動作部品が格段に多く故障する確率が明らかに高いです。そしてこれら動作部位すべてから騒音がするので結局空冷に騒音で勝つには回転数を下げるなどの方法を取らないと厳しいと思います。
そして空冷も水冷は結局は熱を別のとこに追いやっているだけであり、総合的な熱のやり取りは空冷も水冷も変わらずそればかりかポンプも熱源であるので、最終的には水冷のほうが熱の発生量は大きいです。そして室温以下には空冷も水冷もCPU温度を下げることができないので、部屋の温度が35度以上になるような環境では強力な水冷クーラーを導入しても効果は薄いです。それを行うならばエアコンを導入して空冷にする方がはるかにパソコンは冷えます。
LEDもついているということはLED自身も熱源であり、かえって無駄な熱を発生することにつながっています。LEDがついている商品はコスパが悪いといっているようなもので、コスパを求めるような場合はこれらがついている商品を選ぶことを避けましょう。
よくゲーマー系インフルエンサーで、できればCPUクーラーを水冷にしましょうという人がいます。しかし、最近のCPUはゲームくらいでは水冷クーラーをつける必要があるほどCPUが爆熱になることはないです。もし爆熱になっても勝手にクロックを下げてくれるので、焼損事故などは起こりえません。ましては、BTOの考えられた構成で水冷ではないと使うことができないなんていうのはあり得ないので、そういう意見は完全に無視をするべきだと思います。
簡易水冷 (AIO水冷)
よく導入される水冷式クーラーはこちらのタイプです。簡易水冷は水枕、送水を行うホース、ポンプ、ラジエーターが一体型になっており買えばそのままクーラーとして使うことができます。英語ではAIO水冷とも言います、こちらの方が実情に合った名前だと個人的には思います。
メリット
後述の本格水冷と比べると、初心者でも簡単に水冷CPUクーラーをPCに組み込むことができます。中には空冷並みに導入が簡単なものもあるので取り回しに関しては特に心配することはないでしょう。
そして本格水冷に比べると圧倒的に安価に導入することが可能です。本格水冷で360mmのラジエーターを組み込んだシステムを作ろうものならラジエーターだけで1万円以上かかる世界ですが、簡易水冷なら2~3万円でシステム一式を購入することが可能です。水冷には興味があるが、お金はないという方にはお勧めのシステムです。
あとは前述のとおりに光物パーツが多めなのでPCのドレスアップパーツとしては最適です。
デメリット
正直240mmの簡易水冷では、ハイエンド空冷と比較して冷却能力にそこまで大差ないこともまあまああります。そんでもって値段が高く、壊れやすいので120mmのラジエーターのものは窒息ケースで熱をどうしても排出したいということがない限り採用はしない方がいいともおもいます。
一方で360mmのラジエーターを採用したものは確かに良質な冷却性能を誇りますが、360mmのラジエーターになると巨大なので対応しているケースも限られます。
さらに、品質の悪い簡易水冷は音がうるさく、大して冷却性能も得られないというポンコツもあるので金額が多い分はずれを引いた時の失望も大きいです。
おススメ商品
Fractal Design Celsius S36 水冷一体型CPUクーラー HS1236 FD-WCU-CELSIUS-S36-BK
簡易水冷では人気のアセテック社がOEM生産している商品です。アセテック製の製品は簡易水冷の中でも良好な冷却性能を発揮することが有名でほかにNZXTやmsiの簡易水冷クーラーも作っています。その中でもフラクタルデザインのものはシンプルかつ比較的安価に購入できます。360mmのラジエーターなので、ハイエンド空冷と比べても強力な冷却能力を持っており、定格よりもOCをして使いたい、OC常用を考えてる際に検討するとよい商品です。
Fractal Design Define 7 Black TG ミドルタワーPCケース E-ATX 対応 強化ガラスモデル FD-C-DEF7A-02 CS7695
360mmのラジエーターをケースに組み込む場合に考えられるケースです。360mmの簡易水冷は確かに強力な冷却能力を生み出しますが、収納できるケースも限られているので寸法の確認は重要です。もしくはケース外に完全にラジエーターを出し、ケース外に収納しきるのをあきらめるという選択肢もあります。
Define7は昨今のPCケースの中でも特に出来のよいケースであり、360mmラジエーターも上部に収めることができます。
本格水冷 DIY水冷
本格水冷はポンプ、ラジエーター、送水ホース、水枕などのパーツをそれぞれ自分でそろえて水冷システムを組んだものです。本格水冷というとなんか簡易水冷よりも強力なものなんだろうなというイメージが先行しがちなので、英語圏のDIY水冷という名前のほうが実情に合っていると思います。
メリット
最大のメリットはすべて自分で選んだパーツで組むことができるので、最強のカスタム性を誇ります。これにより自分の好きな構成をとことん追求できるので世界に唯一の没個性的なPCをくみ上げることが可能です。
また、一つにループに二つラジエーターを組み込んだり、簡易水冷よりもはるかに強力なポンプを導入したり、巨大なラジエーターを組み込むなど、簡易水冷では実現しえない究極の冷却ソリューションを構築することが可能です。
デメリット
知識が無いと簡易水冷以下のポンコツシステムになる可能性があります。さらに自分で水の管理を行う必要があるので、水漏れでショートが起きた場合自己責任です。壊れてもメーカーに返品できないので保証がという方は絶対に無理です。
そして本格水冷のシステム構築は極めて高額です。水枕1つにつき2万円以上、ポンプが1万円、ラジエーターが数万円、水路をつなぐフィッテイングがパーツ一つにつき1000円ほどと満足する冷却ソリューションを実現するには軽いパソコンが買えるくらいは必要になってくると思います。ですが、頑張ってこれらのパーツを集めて強力なクーリングを実現したとしても劇的にスペックが化けることはないです。コスパに関しては先ほどの簡易水冷とも比較にならないレベルで劣悪です。あくまでも、CPUのOCで理論値を求める方やドレスアップガチ勢の型が自己表現として行う最終形態として本格水冷があると思ってください。
初心者には全くお勧めできませんし、BTOでも基本的に本格水冷オプションまで存在するようなものはないと思います。
当サイトではあまり本格水冷は推奨しませんが、水枕はEK製が最も有名です。
https://www.ekwb.com/shop/
空冷と水冷の選び方
基本的には空冷のCPUクーラーのほうがおすすめです。空冷はメンテナンス性もよく、コストパフォーマンスも高いのでよほどこだわりが無ければ空冷でも問題はありません。そもそもCPUより熱を発するGPUが空冷タイプのものが多いのでわざわざCPUで水冷を使う必要はないでしょう。
なので水冷システムのほうがおすすめの方をピックアップします。
・ドレスアップをするため光るパーツとして簡易水冷を導入
・狭い窒息ケースでPCを運用する際に排熱を促進するために使う
・ベンチマークガチ勢
・古い世代のCPUをOCして喝入れをする際に使う
・MOD PCのコンテストに出場するためにPCを組む
ドレスアップをする際には、簡易水冷は光るものが多いので見た目が派手でおススメです。設置できるファンの台数も多いので迫力のあるPCを組むことができます。
狭い窒息ケースでPCを運用する場合は、ケース外にラジエーターを出すことで排熱を効率よく行うことができます。ただしこの場合は、おそらくケース内にラジエーターを収納することはできないのでコンパクトにするというコンセプトにはできないと思います。
ベンチマークガチ勢はOCをすると熱が多く発生するので、その熱の解消のために強力な冷却能力が必要だからです。
そしてintel製のCPUはcoreの2世代くらいまではOCすればまだ現役で使えます。もちろん新しいCPUのほうが効率はいいですが、これらのCPUは現在の最新世代のマザーボードとはソケットもメモリの規格も異なるのでPC一式をそろえなおす必要があります。それに比べると360mmのラジエーターの簡易水冷は安価にそろえられるので、個人的には簡易水冷のおススメの使い方だと思います。
最後にMOD PCのコンテストですが、これはドレスアップした自作PCの見た目を競うコンテストでこれに関しては派手で豪華な見た目が要求されるので基本的に選択肢は本格水冷一択となります。