チュウニズムの問題点

info

 前回は、チュウニズムの良い点、商業的に成功した理由を考察しました。しかしチュウニズムが、全てが完璧なゲームかというとそうではなく、音楽ゲームの古参を中心にわだかまりを生んでしまうきっかけを作ってしまったゲームでもあります。

 また、チュウニズムが掘り起こしてしまった最近の音楽ゲームの問題点も存在するので、今回はチュウニズムの問題点と称して紹介、考察をしていきたいと思います。

チュウニズムに関しては前回の記事も参考にしてください

チュウニズムはなぜ成功したか

1 BMS楽曲の大量収録

 チュウニズムの魅力でもあり、強みでもある大量のBMS楽曲ですがこれはいわば諸刃の剣で、古参からの印象は悪いばかりか強い拒否感を持ってしまうプレイヤーも一定数存在します。

 というのも、そもそもBMSというのはBeatmania IIDXをモチーフにしたシミュレーターであり、法律的にはグレーゾーンでKONAMIの匙加減次第によるところが大きいものです。

 現状では、BMSはBeatmania IIDXの宣伝にある程度繋がっているので、非営利目的ならば目をつぶってあげるというような状況です。また、BMSの楽曲を作っているコンポーザーをKONAMIの方で囲い込みたかったという理由もあったと言われています。

 しかし目をつぶってもらえるのは、それも非営利目的というのに限りです。コンポーザーが自作のBMS曲を売るのならともかく、チュウニズムのように競合他社が同じ市場で自社のコピー製品の楽曲を使って、それをさも自分たちで好きなように扱えるような振る舞いをしているのは、KONAMIのゲームのプレイヤーからすると不信感と不快感を抱かせてしまうと言えるでしょう。

 また、BMSプレイヤーやBMSの文化に携わる人(まとめてBMS界隈と呼ばれている)のすべてがすべて、チュウニズムへのBMS楽曲を手放しで喜んでいるわけではありません。

 BMS界隈には、何も有名なコンポーザーばかりが存在するわけではなく、新人のコンポーザーや趣味で楽曲を作曲しているような人が曲を提供している場合も多いです。今のように、BMS楽曲の移植がメジャーではなかった時代では、趣味で作った楽曲のBMSを遊ぶというのがポピュラーで、それと付帯するような感じで緩やかな同人音楽の文化が生まれていきました。

 しかし、BMS楽曲が本格的にチュウニズムに移植されるようになると、年に一回開催されるBOFと言ったBMSの出来を競うコンテストが、年に一度の作品の発表会という感じから実質AC音ゲーの公募となってしまい、バチバチの音ゲー楽曲の出来を競技会となってしまいました。

 昔は譜面が最重要でその他BGA、楽曲そのものを含めたBMS全体の出来を競う発表会だったのですが、現在では音楽そのものの方が重要視され、BMSをそんなにやっていない人も投票に参加してAC音ゲーに収録してほしい有名な作家のBMSがとりあえず上位に君臨してしまうという、BMSの出来を競う大会としての側面が形骸化しています。

 従来の発表会のようなものなら投票で不正をする必要がありませんが、最近ではBOFで上位をとるとチュウニズムなどのAC音ゲーにも楽曲を収録できるチャンスが生まれるため、とうとうその弊害として投票の不正が起こるなどの事件がBOFでも起こりました。

 そして、BMSはあくまでも非営利で活動をしないけません。そのため、BOFや譜面の配布は有志の方が自分のポケットマネーを出して維持しています。しかし、チュウニズムではBOFなどのイベントの上位楽曲を、狙い撃ちして収録しています。

 BMS楽曲の収録は、AC音ゲーに新たな作家の楽曲を収録できたため、新しい風を吹かせることに成功しました。その一方で既存のBMS界隈の文化を崩壊させ、競合他社に対して極めて挑発的な態度であると思います。

 また個人的な感想ですが、人がお金を出して作った大会の結果を盗んで、売れそうな楽曲だけを自分の商品として売るというのは、正直いただけないと思います。移植をするのであれば、もう少し責任と敬意をもってさまざまな作家さんの曲を収録する覚悟が必要だと思います。

2 操作デバイスの問題点

 これは、上級者というよりも初心者にありがちなことですが、操作の仕様がいまいちわかりにくいというのが挙げられます。

https://www.youtube.com/watch?v=g3oDIoYc05U より引用

 例えばこのような配置は、指で取らずスライドをさせるだけで取れますがチュートリアルでは、このような高速階段の説明は存在していませんのである程度慣れと感が必要です。

 これ以外にも一見、縦連で取れそうにないという配置も一見ありますが、グラウンドスライダーの仕様が分かっていると取れるなど初見には厳しい仕様ではあります。

 さらにAirアクションと赤いノーツが同時にあるような配置では、視認性が悪いということもあり高難易度の譜面ではかなり雑然とした見ずらい譜面になっています。

 これらは仕様であり、プレイヤー自身が慣れれば些細な問題ではありますが、ノーツデザインの変更などができるようになるとある程度の改善も見込める可能性があるので、ここに関しては是非とも検討してほしいところではあります。

3 運営の悪ノリが過ぎる

 この項目をみてなんだこれと思う方もいるかもしれません。しかし、チュウニズムの場合は正直運営に支障をきたすレベルで悪ノリが過ぎていると思います。

 例えば、称号ですがネットミームだったり移植元もとの名前を使うまではいいですが、センシティブな特に競合となるKONAMIとの移植企画がある際には、公式とは一切関係ないミームを使うことにより誤解を招く可能性があったりなど、その悪ノリが他のゲームに影響を与えかねない事例もありました。

https://chunithm.gamerch.com/NAOKI%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88 より

 また、これはNAOKIコラボの告知ですがこの告知はDDRやクロスビーツをオマージュしたものであり、もともとDDRやクロスビーツのコンポーザーであったNAOKI氏のイベントとは言え、現在関係ないゲームのボスフォルダー演出を丸パクリに近いレベルで使うというのは、センシティブな問題であり微妙だというプレイヤーも一定数存在します。

元ネタ ATTACK PERDECT FULL COMBO

https://twitter.com/echospherics/status/885782363602509824 より

 さらには、キャラクターのイラストもゲームセンターという公共の場所に置いてあるというゲームとして考えるとふさわしくないというイラストを使ってしまって炎上したこともあるので、もう少し自分の商品の属性を考えてPRをする必要があると思います。

(フェミニストではないです。あくまでも公共の場所で多くの人の目が見てしまうので、それに配慮したイラストを考えておくべきだという意見です。)

 チュウニズムの場合は、とにかくデリカシーの無い行動が発端となって運営の態度が疑問されることがしばしばあります。これらの行動は、少し考えれば炎上前に防げるものであり、運営の不注意と言わざるを得ません。

 プレイヤー側からは、面白い発言だったり行動だったりするかもしれませんが、運営はあくまでもゲームの運営が円滑に進むようにするべきであり、本来は行き過ぎたプレイヤーのムーブメントを抑えるストッパーとして機能するべきです。それに便乗してプレイヤーサイドの悪乗りで盛り上がるべきではないと思います。

4 収録楽曲が他のゲームと変わらなくなってしまった

 現在は、そこまで潜在化している問題ではありませんが、これはいずれ深刻な問題として訪れる問題だと思います。

 チュウニズムのオリジナル楽曲は、BMSの大会で優秀な成績をのこしたコンポーザーや、他ゲームでも多くの楽曲を提供しているコンポーザーからの楽曲がほとんどですが、これは言い換えると自社のコンポーザーでほとんど楽曲を提供していないと言えます。

 同じく外注曲がメインのPump it Upでも、昔はBanyaのようなオリジナル楽曲集団がいて楽曲の数がある程度担保されていましたし、また外注のコンポーザーとはいえDoin氏やNato氏のように実質PIU専属扱いです。

 しかし、チュウニズムでは人気コンポーザーが一人ひとり少しずつ楽曲を提供する形です。そして、現在ではチュウニズムに楽曲を提供してくれていた作家が少しずつスマホ音楽ゲームへ音楽を提供し始めています。事実アーケアやDemmoなどではBMS界隈出身のコンポーザーの楽曲が人気です。

 音楽ゲームに人気楽曲を提供しているコンポーザーは絞られており、少数の人気のコンポーザーをAC、スマホ、PCの全ての音楽ゲームで提供していらっている形です。そのため、近々チュウニズムはその他の音楽ゲームとコンポーザーの奪い合いが起きる可能性があります。

 一方で、自社でコンポーザーを育成し、コンポーザーが社員として楽曲を提供しているBEMANIブランドのゲームではあまり影響を受けないです。BEMANIではすでにコンポーザーごとに固定の客層もついていますし、なによりもBEMANIのコンポーザー集団はBEMANIブランドのゲームをやるうえでの大きな魅力となっております。

 それは、現在の環境にも少しずつ現れており、チュウニズムが出た一時期はSEGA系の音ゲーが、時代遅れのBEMANIのゲームをサービス終了へ追い込むという噂もされていたほどですが、ここ最近はBEMANIのゲームも持ち直しておりスマホゲームとは一段違う本格派の音楽ゲームブランドとしてイメージを確立することに成功しました。一方でSEGA系のゲームはチュウニズムにリリース当初の時と比べると勢いは落ちてきていると言えます。

 こうなった要因としては、自社でコンポーザーを育成することで他の会社ではプレイすることができない楽曲を、魅力として前面に打ち出せたことも大きいと言えます。

 チュウニズム運営もこのようなことは、認識しているため最近はSEGAに有利に楽曲を提供してもらえるように公募企画や、新人コンポーザーのレーベルを打ち上げるなどの作戦を立てていますが、正直これらの活動はもう少し大きい動きにならないといけないと思います。

5 チュウニズムのこれから

 ここまでチュウニズムの問題点をつらつらと書いていますが、私自身の感想としてはハード面の完成度が高い音楽ゲームだなぁと思います。

 操作感にしてもUIにしても初心者にも使いやすく、上級者も満足が行く仕様ですし楽曲自身もプレイヤー自身の重要にあったものを提供していると思います。

 ハード面の完成度に対して、ソフトが追い付いていないというのがチュウニズムの問題点だと思います。課題となっているソフト面が洗練されれば、このゲームはさらなる発展を遂げると思います。

 最近では、音ゲー大国である韓国に上陸するなどチュウニズムにとっての良いニュースも聞きます。チュウニズムのこれからの発展を期待してこの記事を終わりにします。

See also  DDRのボス曲の歴史 X~X3 vs 2nd mix
Rate article
踏みゲー学会